第27章 長谷川栞が戻ってきたら、彼女の居場所なんてあるのか?

中尾美希がドアを押して入ってきた。簡素なポニーテールに、身体に沿うスーツ。きびきびとした所作で、口元には教科書通りの微笑を貼りつけている。

そして今この瞬間だけは、瞳の奥にちょうどいい具合の心配と、いたわしさを滲ませてみせた。――中野蓮に向けて。

中野航平は彼女を見て、わずかに息を止める。

一瞬、中尾美希の中に長谷川栞の影を見た気がした。

「いい。……残業代、10倍でつけてやる」

日に日に痩せていく蓮の顔が脳裏をよぎり、航平は頷く。

中尾美希の笑みが、さらに深くなる。

本当は言いたかった。残業代なんていらない、と。蓮の世話なら、むしろ進んでやりたい、と。

けれど航平はまだ栞と...

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